赤井 誠

県内中小企業の景況感は改善しました。しかし、製造業と非製造業を分けると、明暗は逆です。埼玉県の調査では、全業種の景況感DIが3期ぶりに改善する一方、非製造業は2期連続で悪化しました。ひとつの「県内景気」という数字だけでは、企業が直面する負担の違いを捉えきれません。

全体は改善、非製造業は悪化

埼玉県が2026年10月23日に公表した「四半期経営動向調査」は、県内中小企業2,200社を対象に実施され、1,548社が回答しました。回答率は70.4%で、調査日は同年9月1日時点です。

全業種の景況感DIはマイナス33.7で、前期から4.6ポイント改善しました。製造業はマイナス28.6となり、11.4ポイント改善しています。一方、非製造業はマイナス37.7で、0.5ポイント悪化しました。改善の勢いが製造業に偏り、非製造業では弱さが続いていることが分かります。

DIは、回答を集計して景況感の動きを示す指標です。今回の数値は県内中小企業の調査結果であり、県内の企業すべてや、個々の事業者の経営状況をそのまま表すものではありません。それでも、全体の改善だけを見て「地域経済が一様に回復している」と受け取るのは早計です。

価格交渉ができても、コスト高は消えない

特別調査では、発注側企業と十分に価格交渉できているとした企業は56.5%でした。できていないとした企業も27.2%あります。価格交渉ができるかどうかは、仕入れやエネルギーなどのコストを販売価格に反映し、事業を続けられるかに関わる論点です。

また、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の高騰などについて、54.4%が「現時点で悪い影響がある」と回答しました。景況感が持ち直しても、コスト上昇が企業の負担として残る場合があります。調査結果だけでは、どの業種がどの程度の影響を受けたのか、あるいはその負担が雇用や家計にどう及んでいるのかまでは分かりません。

ここに、景気指標を読む際の難しさがあります。企業が価格転嫁できれば経営を支えられる可能性がありますが、その価格が取引先や消費者にどう影響するかは別の問題です。今回の調査は価格交渉やコストの状況を示しますが、最終的な負担の行き先までは明らかにしていません。

県全体の数字を、支援の設計につなげられるか

日本銀行の2026年10月の地域経済報告では、地域ごとの景気判断に改善がみられた一方、コスト上昇や販売価格への転嫁も示されています。地域単位の判断と、県内中小企業の業種別調査は、異なる粒度で経済を映します。大きな地域判断で回復が見えても、その恩恵が業種や事業者に均等に及ぶとは限りません。

自治体の支援策を考えるうえでも、全体の景況感だけでなく、製造業と非製造業の差、価格交渉の難しさ、エネルギーコストの影響を見分ける必要があります。ただし、今回の調査から特定の支援策の効果や、住民の負担増を断定することはできません。支援を検討するなら、対象業種や利用状況、事業継続への影響を別途確かめることが欠かせません。

県内景気が「改善したか」だけでなく、どの事業者が改善の流れに乗れていないのか。次に見るべきなのは、業種別の推移と、価格転嫁やコスト負担がその後どう動くかです。平均値の改善を、地域経済の回復と取り違えないことが、実情に合った政策を考える出発点になります。

参考

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