オレンジ色の光体が現れ、赤い光体をいくつも放つ。2023年10月、米西部の国家安全保障施設付近で、連邦法執行官6人がそんな現象を報告しました。米国防総省の全領域異常解決局(AARO)は活動の一部を軍用機のフレアとみる一方、残りを未解決としています。ただし、その「未解決」は、異星技術や超常現象を示す言葉ではありません。
6人が報告した「光体が光体を放つ」動き
AAROの2026年6月5日付分析メモによると、目撃は2日間にわたり、おおむね夕暮れに起きました。連邦法執行官6人が2人ずつ3チームに分かれて観察したとされています。施設の正確な所在地は公表されていません。
目撃者の説明では、オレンジ色の光体は1~2秒ほど現れ、2~4個の赤い光体を放ったように見えた後、見えなくなりました。同じようなパターンが複数回あったといいます。これはあくまで目撃者が見た動きの報告です。物体が実際に分離したことを映像やセンサー記録で確認した、という意味ではありません。
約6割はフレアと整合、残りは説明できず
AAROは飛行記録、レーダー、ADS-B記録を照合し、報告された活動のおよそ60%が、演習中の米軍機による赤外線対抗フレアと「もっともらしく」整合すると評価しました。フレアはミサイル誘導などへの対抗手段として航空機から放出されるもので、遠くから見れば光体として観察される場合があります。
一方、目撃者は光体が自分たちの知るフレアの特徴とは異なると述べています。また、残る約40%はAAROの第一段階の分析では説明がつかず、事件全体は未解決とされました。この割合は「報告された活動」についての分析上の値です。独立に確認された物体の数や、未知の技術が存在する確率を表すものではありません。
記録には、赤い光体が数時間静止していたという報告もあります。AAROは、そうした説明は既知の軍用フレアの燃焼時間や降下率と合わないと指摘しました。つまり、フレア説で説明しやすい報告と、同じ説明では扱いにくい報告が混在しています。ほかに検討された開発中の米軍技術は結論に至らず、外国情報活動や自然現象は可能性が低いと評価されていますが、いずれも正体の確定ではありません。
「未解決」を生んだのは、証言と記録の隔たりです
この事例で重要なのは、複数人の目撃報告がある一方、現場で動画や写真、その他の技術データが収集されていなかった点です。公表された再現映像も、目撃者の説明をもとにFBIが作成した視覚化で、現場で撮影された映像ではありません。目撃者が同じ現象を見たという事実と、光体の距離、高度、速度、物理的な動きを測定できていることは別です。
NASAも、UAPについて科学的な結論を導くには質の高い観測データが必要だと説明しています。正体が分からないことは、説明が見つかっていないという意味であり、地球外起源の証拠ではありません。光の見え方は距離や大気の状態、観察条件にも左右されます。こうした条件を確かめる記録がなければ、証言を精査するにも限界があります。
AAROの未解決判定は、謎の答えというより、調査がどこで止まっているかを示しています。追加のセンサー記録や、より正確な時刻・位置情報があれば、フレア説を第三者が検証し、説明のつかない部分も絞り込めるかもしれません。次に問うべきなのは、光体が何だったかだけではありません。似た報告を次回は検証可能な記録として残せるのか――その備えもまた、謎を科学に近づける条件です。
参考
- 米国防総省/AARO「Western U.S. Event “Orbs Launching Orbs”」分析メモ
UAP FAQs – NASA Science< Back to UAPNASA Science- AAROの公表映像説明
- AP通信による目撃報告の報道
