原発の安全審査を支える地震動評価をめぐり、中部電力は浜岡原発3・4号機の設置変更許可申請などを取り下げ、会長と社長が辞任しました。社外専門家による調査委員会は、問題となり得る行為を「適切だった」と認定していません。一方で、「改ざん」や「ねつ造」といった言葉だけで一括りにすることにも留保を示しました。問われているのは、評価の技術的な妥当性だけでなく、その判断を組織がどう管理していたかです。
申請取り下げと経営トップの辞任に至るまで
調査対象は、浜岡原発3・4号機の新規制基準適合性審査における地震動評価と、基準地震動の策定です。中部電力は2026年9月11日、社外専門家のみで構成する調査委員会から報告書を受領したと発表し、14日に開示版を公表しました。
同社は9月14日、3・4号機の設置変更許可申請などを取り下げる方針を決定し、25日に原子力規制委員会へ提出しました。林欣吾社長と勝野哲会長は9月30日付で辞任しています。申請の取り下げと経営責任の表明は確認できますが、これだけで個々の評価手法の適否や法的責任が確定したわけではありません。
「改ざん」の一語では見えない調査委員会の指摘
調査委員会の説明で重要なのは、行為を正当化していないことと、問題を単純なラベルに還元していないことの両方です。短い見出しだけで「改ざん」と断定すれば、報告書がどの行為をどう評価したのかが見えにくくなります。逆に、単純化への留保を理由に問題がなかったかのように扱うのも適切ではありません。
中部電力の会見説明では、報告書は「独自の正当化理論」や特異な考え方の広がり、専門性に起因する統制機能の不全、経営層の審査実態への理解不足、牽制機能の弱さを指摘しています。テレビ朝日は、早期再稼働を前提とする経営層の発言が不適切な行為を促す要因となった可能性が示されたと報じました。ただし、個々の行為や因果関係を評価するには、報告書本文に即した確認が欠かせません。
専門性が高いほど、組織の検証が問われる
地震動評価は高度な専門性を伴います。専門知識が必要なこと自体は避けられませんが、その専門性が社内での検証を難しくし、担当者の判断に異論を唱えにくい環境を生むなら、安全審査の信頼性は揺らぎます。問題の核心は、技術者個人の判断だけでなく、異なる見解を検討し、経営層や監督部門が審査の実態を把握できる仕組みが機能していたかにあります。
原発の審査では、申請資料の正確さと、規制当局がその内容を独立して検証できることが重要です。申請を取り下げたことで、審査はそのまま続けられません。したがって再発防止策は、研修や規程の改定だけでなく、評価の根拠を追跡できる記録、異論を表明できる手続き、経営層が審査内容を把握する方法まで具体化される必要があります。
今後の焦点は、後任体制の下でこれらの仕組みが実際に整い、規制当局が再申請や審査の信頼性をどう判断するかです。報告書の指摘を「誰が辞めたか」で終わらせず、専門的な判断に対する組織の牽制がどのように働くのかを検証できるかが、浜岡原発に限らず安全審査への信頼を左右します。
参考
浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案に関する調査報告書の受領 – ニュース|中部電…中部電力からのプレスリリースです。中部電力
浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案に関する調査報告書の公表 – ニュース|中部電…中部電力からのプレスリリースです。中部電力
2026年9月度 定例記者会見 林社長挨拶 – ニュース|中部電力中部電力の定例記者会見を紹介するページです。中部電力


